トロンビンとは？その働きや機能、病気との関係について詳しく解説

プロテイナーゼ活性型受容体の血管生理学・病態生理学（研究開始：1996.11～）香川大学医学部自律機能生理学

トロンビンは、血液凝固に重要な役割を果たすタンパク質です。血液が傷口から出血した際に、トロンビンはフィブリノーゲンというタンパク質をフィブリンという線維状の物質に変換し、血液を固まらせます。この凝固反応は、体内の出血を止めるために非常に重要な役割を果たしています。

トロンビンは、トロンビノーゲンから活性化されます。トロンビノーゲンは肝臓で生成されるタンパク質であり、血液中に存在しています。傷口から出血すると、体内で起こる一連の反応によってトロンビノーゲンがトロンビンに変換されます。この反応は、血液凝固カスケードと呼ばれる連鎖反応の一部です。

トロンビンは、血液凝固だけでなく、体内でさまざまな機能も果たしています。例えば、トロンビンは炎症反応に関与し、免疫応答を調節する役割もあります。また、トロンビンは血管内皮細胞や平滑筋細胞に作用し、血管収縮や血液流動性の調節にも関与しています。

トロンビンの働き

トロンビンは、血液凝固カスケードの中心的な役割を果たしています。傷口から出血すると、血小板が傷口に集まり、血小板凝集と呼ばれる反応が起こります。この反応によって、血小板が傷口を塞ぎ、一時的に出血を止めます。同時に、血液中のフィブリノーゲンがトロンビンに変換され、フィブリンが形成されます。フィブリンは線維状の物質であり、傷口を更に固める役割を果たします。

また、トロンビンは炎症反応にも関与しています。炎症が起こると、体内の免疫細胞が活性化され、炎症部位に集まります。この際、トロンビンは炎症反応を調節する役割を果たし、免疫応答を制御します。具体的には、トロンビンは炎症部位での血管透過性の増加を促し、免疫細胞の浸潤を助けます。また、トロンビンは炎症部位での血管収縮にも関与し、炎症反応の進行を制御します。

さらに、トロンビンは血管内皮細胞や平滑筋細胞に作用し、血管収縮や血液流動性の調節にも関与しています。トロンビンは血管内皮細胞に作用することで、血管収縮を促します。また、トロンビンは平滑筋細胞に作用することで、血管の収縮や拡張を調節します。これらの作用によって、トロンビンは血圧の調節や血液循環の維持に重要な役割を果たしています。

トロンビンと病気の関係

トロンビンは血液凝固に関与するため、トロンビンの異常な活性化や過剰な生成は、血液凝固異常や血栓症の原因となることがあります。例えば、トロンビンの活性化が過剰になると、血液凝固が過剰になり、血栓が形成されるリスクが高まります。これによって、血液が正常に循環せず、重要な臓器への血流が阻害される可能性があります。

また、トロンビンの過剰な生成も血液凝固異常や血栓症の原因となることがあります。例えば、トロンビノーゲンやフィブリノーゲンの遺伝的な異常によって、トロンビンの生成が亢進することがあります。また、肝臓の疾患や炎症性疾患などでも、トロンビンの生成が亢進することがあります。これによって、血栓が形成されやすくなり、血液凝固異常や血栓症のリスクが高まります。

逆に、トロンビンの欠乏や機能の低下も血液凝固異常の原因となることがあります。例えば、トロンビンの生成が低下する遺伝的な異常や、トロンビンを分解する酵素の異常によって、トロンビンの機能が低下することがあります。これによって、血液凝固が適切に行われず、出血しやすくなる可能性があります。